『わたしは楳図かずお マンガから芸術へ』
著者:楳図かずお
発行年:2025年3月
発行所:中央公論新社
221ページ
分類番号:726.ウ
この本を読んだきっかけ
予約されてうちの館に回ってきた本。
パラパラと中身をチェックしていたら読みたくなった。
もともと私は『まことちゃん』が好きだった(最初は嫌いだった)。
本の概要
漫画家楳図かずお先生の幼少期からの自伝。
作品も紹介。
作品作りにどのように向き合ってきたかが語られる。
感想
私は最初、楳図かずお先生の漫画『まことちゃん』が嫌いだった。
独特の絵柄が怖かった。
ギャグ漫画ということと、”グワシ”ポーズは知っていたが、それでもなぜか怖かった。
いざ読んでみると、面白かったから驚いた。
なぜ怖いと感じたのか、この本を読んで納得できたような気がする。
恐怖マンガというジャンル
私が小中学生の時よく遊びに行っていた児童館に楳図かずお先生の『漂流教室』があり、全巻ではないが読んだ覚えがある。
本当に怖くて読み続けるのに勇気が必要だったほどだ!
その頃『恐怖新聞』(つのだじろう)も怖くて評判だった。
「恐怖漫画」という名称は楳図かずお先生が考えた言葉で、自分の漫画をそれまでの「奇怪漫画」とは違うものということで名付けたそうだ。
奇怪というのは見た目が怖いことで、恐怖は心で感じる怖さということだった。
こだわりを持って描いていたのだなあと思った。
『漂流教室』続きを読みたくなった。
手塚治虫の影響はすごい
令和7年春からのNHK朝ドラ『あんぱん』の中で、やなせたかし先生も手塚治虫先生の『宝島』『ロストワールド』に影響を受けたことが描かれていた。
私が松本零士先生の原画展に行ったとき、松本零士先生もやはり手塚治虫先生の『宝島』に影響を受けたことが示されていた。
楳図かずお先生も『ロストワールド』に影響を受けたそうだ。
こんなにすごい漫画家たちがそんなにも影響を受けた手塚治虫先生は本当にすごい人だったのだなあと、この本を読んでまた思った。
(『火の鳥』は読んだことがある)
心に残った箇所
私は「恐怖と笑いは紙一重」という言葉を以前から知っていた。
まことちゃんはギャグ漫画だけど絵柄は怖いままなので(劇画タッチ)読む時無意識に緊張してしまう。
ギャグ漫画なのに何か怖いことが起こりそうだとドキドキしながら読んでいた。
一つ、よく覚えているシーンがある。
まことちゃんちの炊飯器のご飯が炊けて、まことちゃんが炊飯器をあけて中を見ると○○○○が一緒に炊けていたというシーン(○○○○はご想像にお任せする)。
このシーンはもちろんギャグとして描かれていたがその時私はとても恐怖を感じたのを覚えている(誰が見ても恐怖だとは思うが)。
私が「恐怖と笑いは紙一重」とは、こういうことなのかと自分なりに理解した出来事だった。
ここからが本題。
「恐怖と笑いは紙一重」とは誰が言った言葉かは知らなかったが、この本の中に楳図かずお先生のこんな言葉を見つけた。
笑いは恐怖の一ジャンルなんですよ。
本文から引用
これは先ほどの炊飯器のシーンがまさにそうだと思う。
もしかしたら私が「恐怖と笑いは紙一重」という言葉を知ったきっかけも、楳図かずお先生だった可能性がある。
楳図かずお先生が何かのメディアで話していた内容だったのかもしれない。
あと印象的な言葉は「家の外で起こればSFで、家の中で起これば恐怖」という言葉。
○○○○も家の外で見かけても、ただの虫って感じであまり怖くないもんね(ちょっと違うか)。
追いかけるほうは楽しくて笑っているけど、追いかけられるほうは恐怖、というようなことも書かれていた。
そんな立場の違いというか、見る方向が違えばものごとが違って見えてくるということを教えてもらった。
この本をおすすめする人
楳図かずおに興味がある人
海外が注目する漫画大国日本の漫画家に興味がある人
名前だけは聞いたことあるけど楳図かずおって何者?と思った人
ギャグ漫画も恐怖漫画も好きな人
まとめ
強い信念、確信を持って誰にも迎合せず、曲げられないものをずっと曲げないまま持ち続けている人は、時間がかかっても唯一無二のものを生み出し、世間に認められていくのだなあと思った。
やなせたかし先生も、松本零士先生も。
楳図かずお先生も、そうであった。
海外での評価も高いし、賞も受けている(2018年漫画のカンヌとも言われるフランスアングレーム国際漫画祭で遺産賞を受賞)。
もはや芸術なのだ。
最後までお読みいただきありがとうございました。