雫井修介『互換性の王子』を読んで~兄、いい。|読書冒険マラソン記8

読書冒険マラソン記8 互換性の王子
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本の紹介

『互換性の王子』

著者:雫井修介(しずくい しゅうすけ)

発行年:2023年12月

出版社:水鈴社

437ページ

この本を選んだきっかけ

うちの図書館に来た時、表紙のコアラが印象的で目を惹きました。

表紙をめくったところにあるカバーの短い文章によると、どうやら二人の御曹司が仕事と恋とで

バチバチの火花を散らすみたい。で、その二人は対照的な人物らしいと…面白そうでした。

帯を読んでみると(れんげの図書館の大人の小説には、見返しに帯を張り付けます)”一気読み必至のエンターテインメント”と書かれていて、ますます面白そうだったので選びました。

雫井修介さんの本は初めてです。

読書冒険マラソンの第8作目です。

読書冒険マラソンとは…
れんげの働いている図書館にある日本の小説(913.6)を、著者一人につき一冊ずつ順番に読んでいき、全作家制覇を目指す企画です。(れんげの図書館にない本を取り寄せて読んだ場合も、せっかくなので書いています。)
備忘録としてこのブログに感想を残していきます。
基本、書架に並んでいる順(五十音順)に進め、それまでに読んだことのある著者も今一度読みます。
作家それぞれの世界を冒険しに行ってきます!

感想

”一気読み必須”と謳うだけあって、テンポが良くて読みやすかったです。

この小説の魅力は二人の登場人物にあると思います。

とある健康飲料のメーカーの会社の御曹司二人が出てきます。

とにかく兄が好き(意見には個人差があります)

弟(主人公)のほうは最初はチャラくて浅い人物なのかと思って読み進めていったのですが、なかなかバイタリティをもって仕事を進めていく様子に惹きこまれました。

感情を顔にすぐ出すかわいいタイプ。

ですが戦うときには戦略を練り、自分の能力をかけて挑んでゆく強さと少しの狡猾さも併せ持っています。

仕事はデキる。

自己肯定感は高めで、御曹司らしく少々甘いところはあるけれど、坊ちゃん育ちゆえの余裕があり、ひねくれていない素直なところが、なかなかの愛されキャラです。

基本人を信じているがバカではない。

自分の立場をわかっていて、それに引き寄せられて来る人に裏切られても、さっぱりと前を向いていく強さと自信がある。

イメージは茶色。

 

対して兄のほうは、御曹司だけど育った環境は複雑(弟とは異母兄弟)。

硬派で真面目でストイック、頭脳明晰な切れ者。

いまどき七三分けに眼鏡という、わかりやすい堅物。イメージは黒。

帯の書かれようから、非情な悪役だろうと思い読み進めていきました。

家族に取り入ろうという下心が見える言動(そういう書き方をされていたし)に、せこっ、と少しがっかりしたりして。

しかし、この人、弟以上にめちゃくちゃ愛されキャラだと判明し、わたしはギャップ萌えしてしまいました。

感情を表に出さないのは育った環境が複雑なためで、実は感情の出し方がわからないという不器用な人物でした。

普段は沈着冷静で冷たい印象を受けるけれどその心情は幼子のように保護してあげたくなる危うさを持っているのです。

その彼が、嫉妬という感情を持て余し自分で抑えきれなくなってしまい、そのまま挙動不審ともいえる態度を取ってしまって、そのことに自分でも驚き、自己嫌悪に陥るという…なんとも不器用な性格が愛おしかったです。

強そうに見えて、とても純粋で優しすぎる性格。

この人、見ようによっては、又は現実にこんな人がいたら、気持ち悪くて無理かもしれません。

そこは私も冷静に考えました。

しかしこの小説の中では、かれは断トツで魅力的です。大好きです。

そんなわけで、彼を中心にこの小説の見どころを語るとするならば、間違いなく一番のクライマックスは彼のプロポーズ(交際申し込み?)の言葉でしょう。

もってまわった言い方が彼らしくて本当に素敵で、彼の言葉に鳥肌が立ちました。

わたしは彼のこの言葉に出会えただけで、この本を読んで良かったと思いました。

シゴデキなのに人間としての弱さもかいま見せ(たかったわけではないだろうが)、支えたくなるような、生真面目さと不器用さ。母性本能が活性化します。

弟のほうの同じ場面での言葉は、たしか一言で済ませていたような。

そんなところにも二人の違いがよく出ていて楽しめました。

あと忘れてならないのが兄弟の共通の父親である社長。

この人もとても魅力的な人物で好感が持てます。

兄弟にとっては厳しくも頼りがいのある父親で、社長としても、まさにこんな社長の下で働きたいと思える人物です。

親としての大きな愛ある心、経営者としての矜持を両方持ち合わせています。

頭がよく、引く時は引くという冷静な判断力と、はやる若手を抑える社長としてのカリスマ性も持ちながら、やり手で、打って出る時を見定めて攻めるアグレッシブさもあり。

世代的には私と同世代だろうと思います。

そのほかのこと

 派閥争いもありましたが丁寧に仕事を進めるうちに兄弟のお互いの理解もすすみ、えげつないライバル企業に協力して対抗していく過程がテンポよく描かれていて面白かったです。

営業や商品開発の仕事もわかりやすく描かれていて興味深かったです。

タイトルにある”互換性”とは”別のものと置き換え可能”というような意味ですが、たしかに弟と兄が入れ替わってしまう話でした。

互換性は、あったのか、なかったのか?

少なくともヒロインにとっては、なかったようです。

飽きさせず最後まで失速せず読ませます。

思わず泣けてしまう場面もありました。

エンターテインメントでした。

キャスト妄想

弟は、手越祐也さんがピッタリだと思います。

しかし年齢的には10歳ほど若返ってもらいたいです。

兄のほうは佐野菜見さんの漫画『坂本ですが?』の坂本君がいいです。二次元ですが。

しかしこちらは高校生なので、10歳ほど年取ってもらいたいです。

この二人のキャスティングは迷うことがありませんでした。

三次元と二次元ではでどう頑張っても成立しませんので、アニメまたは2.5次元舞台がいいと思います。

雫井修介さんはこんな人

雫井修介(しずくい しゅうすけ)

生年月日:1968年(昭和43年)11月14日

出身地:愛知県

最終学歴:専修大学文学部

小説家 

代表作:・『犯人に告ぐ』「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位(2004年)

    ・『検察側の罪人』「週刊文春ミステリーベスト10」で第4位(2013年)など

 

テレビドラマ化や映画化もたくさんされています。

ミステリーを多く書かれているのですね。

『犯人に告ぐ』は大藪春彦賞(おおやぶはるひこしょう)を受賞したそうです。

大藪春彦賞は、ハードボイルド小説や冒険小説に与えられる賞ということです。

ということは、ミステリーでもありハードボイルドでもあるんですね。

『犯人に告ぐ』を次は読んでみたくなりました。

まとめ

この小説の対照的な二人の王子はとても魅力的。

帯のうたい文句通りのエンターテインメント小説でした。

最後までお読みくださりありがとうございました。

 

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