本の紹介
図書館で借りた本です。
タイトル:「お金のむこうに人がいる」 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門
著者: 田内学(たうち まなぶ)
出版社:ダイヤモンド社
出版年月:2021年9月発行 271ページ
この本を読んだきっかけ
予約がついて回ってきた本をチェックしたときに(図書館の仕事です)惹かれました。
お金は好きなので「お金」に関する本にはもともと興味があります。
でもこの本のタイトルと装丁から、単に経済の話ではなく人に注目しているのだな、ということが感じられ、違う興味がわきました。
経済のことを考えたことなどほぼなく、よくわからないまま50代にまでなった自分。
私にとって経済とは、どこかで専門の誰かが、いつも考えたり研究している課題みたいなイメージでした。
当然、子供らに経済のことを聞かかれても答えられません。
心のどこかで、このままではいけないのではないか、大人として・・・と思っていたような気がします。
パラパラとチェックしてみると、字が大きく、行間も空いていて読みやすそうです。
また「予備知識のいらない経済新入門」という副題から、経済について無知な私でも、読んでわかるかもしれないという期待が生まれ、予約しました。
心に残った一節
専門家が専門用語を使うのは、相手をごまかそうとするときだ。自分をごまかしながら考える人はいない。
経済の話が難しく感じるのは、決してあなたのせいではない。
本文より引用
確かに専門用語を使って説明されても、よくわからなければ「ここから先はついてこれる人だけ来い」と言われている感じがします。
この本には難しい経済用語は出てきません。
読者の側に立って書かれています。
感想
この本の全体の印象は「本来の経済の基本的な知識」が「イメージでわかる」「中学生でもわかる」「道徳的」な良書です。
本来の経済の基本的な知識が得られる
なぜお金が作られ使われるようになったかというところから話が始まるので、本来のお金というものの働きが理解できます。
「お金は増えない。流れているだけ」このことを理解するのが一番のキモだと思います。
そのお金の働きを、ある家の家族に例えて教えてくれます。
家族は、大まかですが社会の縮図なので、この例えで基本的なお金の働きがわかるようになっています。
例えが秀逸
例えがおもしろいので、共感を感じながらわかりやすく納得できます。
前述の家族はその後も登場します。
ほかにも、
「ジャイアンリサイタルのチケットが完売する理由」という章では納税について、
「金庫の裏側には「隠し扉」がある」という章では日本政府の借金の問題が、
それぞれたとえ話をうまく使ってわかりやすく説明されています。
「投資」と「投機」の違い、「価格」と「価値」の違いなどの例え話も的を得ていて面白く読めます。
思わず読んでみたくなりますよね。
そうはいっても、正直、私にはそれでも難しくて正確には理解しきれていない部分もあります。
しかしなんとなくでも、お金の流れがイメージができるようにはなりました。
中学生でもわかる
話のまとまりごとに、3択の短いクイズがあります。
そのクイズをいったん考えてみることで、理解が深まります。
子供に出してみて、勉強のきっかけにすることもできるでしょう。
前述したように、親しみやすい例えが多く子供でもイメージがわきやすいです。
道徳的な良書である
人に注目すること=「誰が働いているのか」を考えること。
茶者は、お金が偉いのではなく働く人が大切なのだという収支一貫した主張に基づいて人にフォーカスして経済をひも解いています。
そうすると経済の本来のあるべき姿がちゃんと見えます。
その姿をゆがませるような、経済にかかわる数字や価格ばかり見ていると、私たちみんなが疲弊し、豊かな社会にはなっていかないということが書かれています。
年金問題や、少子化の問題は一朝一夕には解決できませんが、それでも筆者のまなざしはあたたかいです。
一人ひとりが自分の価値観にもとづき、考えてお金を使い、少しずつ暮らしを良くしていくことが重要で、それが希望になるのだと思いました。
読んで変わった自分
「どうしてお金をコピーしたらだめなの?」と子供に聞かれたら、子供にもわかるように答えられますか?
この本を読む前は、私は答えられませんでした。
本を読んだ後は、一応答えられると思います。
(一応、というのは・・・答えられるんだけど、自分の説明下手のために、ちゃんと伝わるかが不安なため)
投資と投機の違いもわかりました。
今まで、自分と身内にお金を使うことしか考えていなかったけれど、この年にもなったし、社会のために有意義にお金を使うことも意識的に考えていこうと思いました。
少なくとも、本当の意味でお金を無駄に使ってしまうことがないよう、気を付けようと思います。
「経済回さなきゃ!」といってお金を使うことありませんか?思い切ってほしいものを買ったりするときに・・・そんなときに合言葉のように使う言葉です。
ですがこの本を読んで、あるべきように「経済が回る」ということが、どういうことかがわかったので、これからは実感を込めてこの言葉を発することができます。
この本をおすすめしたい人
・私のように今まで経済のけの字も考えてこなかったような人に、入門書としておすすめ
・道徳的なので特に学生におすすめ
著者について
田内 学
1978年生まれ。
東京大学入学後、プログラミングにはまり、
国際大学対抗プログラミングコンテストアジア大会入賞。
同大学院情報理工学系研究科修士課程修了。
2003年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。
以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、
長期為替などのトレーディングに従事。
日銀による金利指導改革にも携わる。
2019年退職。現在は子育てのかたわら、
中高生への金融教育に関する活動を行っている。
本書が初の著書。
〈後ろの著者紹介より〉
特に学生や子供に読んでほしい、と思ったら、著者はすでに中高生へむけて金融教育をされておられます。
この本が初めての著書だそうですが、2冊目、3冊目を・・・と需要があるのではないでしょうか。
まとめ
田内学(たうち まなぶ)さんの「お金のむこうに人がいる」を読んでみました。
- 専門用語が出てこないが説明の例えが秀逸で、経済の基本的なことがイメージできるようになる本
- 自分の価値観は?と思わず考えたくなる
- よりよいお金の使い方をについて考えさせてくれる
- 入門書として特に若い世代におすすめ
図書館や本やさんで見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。