『ビジュアル・シンカーの脳 「絵」で考える人々の世界』の概要
大まかな内容を残します。
著者:テンプル・グランディン 訳:中尾ゆかり
発行年:2023年7月
発行所:NHK出版
分類番号:491グ
325ページ
ビジュアルシンカーとは
大多数の人は言語思考タイプだが、世の中には少なからずの、考えるやり方が違う人たちがいる。
それが絵で考える人たち「ビジュアル・シンカー(視覚思考者)」。
視覚思考者には物体資格思考者と空間視覚思考者の2種類がある。
著者もビジュアルシンカーで、どのように考えているのか説明されていたのだが、読んでもよく理解できなかった。
作者の説明によると、設計図の描き方を勉強するときに実際の建物のところへ行き、設計図に描かれている記号と実物(柱など)を見比べて理解するということだった。
著者はそうやって詳細な設計図が描けるようになったらしい。
ビジュアルシンカーだと考えられる人たち
ビジュアルシンカーはアスペルガー症候群や自閉症スペクトラム障害をともなうことがある。
有名なビル・ゲイツ(マイクロソフトの創業者)はアスペルガー症候群の人に似た特質があった。
イーロン・マスク(スペースX創設者・オープンAI共同創設者)もアスペルガー症候群だったと公表していた。
著者は、これらの人たちはビジュアルシンカーだと考えている。
それだけではなく、フェイスブックを立ち上げたマーク・ザッカーバーグや、アインシュタイン(脳が一般の人とは違っていたそうだ)ミケランジェロ、エジソンも、ビジュアルシンカーだと考えている。
ロゼッタストーンの二人の解読者もビジュアルシンカーだったのではないかとも。
ビジュアルシンカーへの教育
ビジュアルシンカーの特徴は幼いころから現れることが多いという。
算数が苦手だったり、みんなと同じ行動がとれないなどで、問題のある子どもとして扱われがち。
そういう人たちはこれまで理解されず、学習で成果を上げられないため無能だと勘違いされてきた。
特別支援学級に入れられたり学校から遠ざけられたりしてきた。
しかし実際はIQが高すぎて授業がつまらなかったり、美術や音楽などの芸術、技術の分野で天才的な才能を発揮する力を持っている可能性がある。
これは社会の損失。
一人ひとりの才能を伸ばす教育をすれば素晴らしい発明をする力を伸ばすことができる。
ビジュアルシンカーと一緒に仕事をすると可能性が広がる
考え方のタイプの違う人が組み一緒に仕事をすると、素晴らしいものが生まれることがある。
この本では、実際にビジュアルシンカーが作詞家、または作曲家として組んで名曲が生まれた例をあげている。
また、災害や事故、犯罪を未然に防ぐこともできるという。
『ビジュアル・シンカーの脳 「絵」で考える人々の世界』を読んだ感想
この本を読んでも、私にはビジュアルシンカーの人たちが物事を理解する方法はわからなかったですが、ビジュアルシンカーやアスペルガー症候群、自閉症スペクトラム障害は病気だという感覚は払拭されたような気がします。
病気ではなく、脳の違いなのだという認識を持ちました。
これまでは、タイプの違うビジュアルシンカーという人たちのほうが数が少ないため、あまり理解されないこともあってどうしても教育システムなど、その人たちにあったものを提供することが難しかった。
そしてそのせいで、才能・能力を秘めているのに学歴が低かったり社会に居場所を見つけられない人が多かった。
そしてそのような子供たちへの教育の指揮を親がとることでその才能を伸ばしたという人もいる。
しかしこれからの時代はそれではだめだと思いました。
親や身近な人だけにその才能を見出す役目を押し付けてはいけない。
教育システムをもっと変えていかなければならないと思います。
試験の点数で学力を測り、はみ出した人を別枠で教育するのではなく、それでは測れない才能や能力を伸ばす教育、できれば脳の違いがあっても同じ場で教育を受けられるようになったらいいのかな…と思いました。
同じ教育ではなく、同じ場所で、それぞれを伸ばす教育を…。
難しいですかね。
社会でちゃんと見出し、それぞれにあった教育をして育てなければ、著者の言うように社会の損失になるでしょう。
それから、考え方の違うタイプの人が組んで仕事をすると、素晴らしいものが生まれる可能性があることや、災害や事故を防ぐことができるというのはとても貴重な視点だと思います。
確かに、違う視点で物事を見るというのは何をするにおいても大事で、特に危機管理の分野では有益なことだろうと思いました。
著者はこんな人
テンプル・グランディン(女性)
生年月日: 1947年8月29日 (76歳)
出生地: アメリカ マサチューセッツ州 ボストン
自閉症
動物学者
タイム誌の「世界で最も影響力をもつ百人」に選ばれた
肉牛を処理する施設を設計し、その施設はアメリカとカナダで広く使われているそうです。
この本の中にも、その施設を設計するにあたりどうやって考えたのかの記述がありました。
施設で牛を歩かせるときに牛たちが立ち止まってしまう場所があり、誰も原因が分からなかったとき、著者が自らこの場所に降りていきました(誰もそうしようとはしなかった)。
そして牛の見ている視点から設備を見たところ、なぜ牛たちが止まってしまうのかが分かったそうです。
それから、牛が怖がらずスムーズに歩くための通路を設計したことも書かれています。
この本でいう、視点の違い・考え方の違いがものごとにインスピレーションをもたらす好例。
まとめ
ビル・ゲイツやイーロン・マスクだけではなくエジソンやアインシュタイン、ミケランジェロなど歴史を動かしてきた偉人も脳が一般人とは違っており、今で言うアスペルガーや自閉症だったのかもしれないという話は面白いです。
これからの教育のありかたが、人類の発展にかかわっていると感じました。
最後までお読みいただきありがとうございました。