本の紹介
著者は、食べ盛りの双子男子の母で、義理の親の介護も担い、大型犬も飼っている(多分最短でも20分の散歩が朝晩必要)。
そんな著者が忙しい日々をどのようにして生き延びているかが書かれている。
書名:『いらねぇけどありがとう』
著者:村井理子(むらい りこ)
発行所:株式会社CCCメディアハウス
発行年:2022年12月
分類番号:914.6ム
178ページ
著者の職業は翻訳家・エッセイスト。
1970年生まれ。
この本を読んだきっかけ
そもそも、すでにタイトルで共感していた。
表紙を見た瞬間にこの「いらねぇけどありがとう」という気持ち、しょっちゅう感じるなと思った。
「言いえて妙」とはこのことだ、と思った。
本のタイトルは次のように英訳されている。
”Thanks But No Thanks”
「ありがとう けどいらねぇ」
こちらのほうが心情的にはピッタリくるのではないかと思う。
本の概要
著者の具体的な生活の知恵や、人間関係を良くするコツなどが書かれている。
日々の物事への対処の仕方から、著者の哲学が垣間見える。
感想~共感の嵐
のっけから共感の嵐だった。
まず冒頭の無洗米の話。
著者は米を炊こうと思ってから炊き上がるまでに8時間かかると書いてあった。
その時点で「わかる…同じだ私と…」私も4時間くらいかかる(無洗米)。
自分と同じような(しかも上をいく)人と出会えるとは思わなかった。
そしてそのことをこんな風に表現してくれるなんて。
冷蔵庫に重曹スプレーとそうじシートを入れておくなど、今まで聞いたことないような工夫もあっておもしろい。
休むと決めたらファストフード外・外食・ほか弁の利用も一切躊躇しない姿勢がとても好感が持てる。
しかしこの著者は私から見るととても勤勉である。
私などは家事をもう基本投げ出しているといってもいいのだが、この著者は違う。たまに投げ出すだけのようだ。
完璧でなくてもやる努力を常にしている。
仕事もちゃんとしている(好きな買い物をするために)。
一つのコツは、成果を求めないことかもしれない。
この著者のように、頑張る目的は自分の気分がよくなることで、家がきれいになることは副次的なことと割り切れば、いつも自分の気分を優先できていいと思う。
この本ではとにかく自分を大切にしていい、と言ってくれて嬉しくなる。
そう言われると頑張れる気もする。
心に残った箇所
とても心に残った箇所がある。
著者は、ご両親が生きているうちに感謝の言葉を伝えられなかったことを後悔しているという。
その著者が、”もし今両親が生きていたらどうするか”が書かれていた箇所だ。
実はそれを読む前私の心は身構えた。
もし、「生んでくれてありがとう」とか「あなたの娘で良かった」などと伝えたい、と書いてあったらどうしようと思ったからだ。
私の両親はまだ健在で、今なら言おうと思えば言える状況なのだが、たぶん私は言えないと思う。
なので、もしそうしたほうが後悔しないと言われたら、困ってしまう。
だがこの著者が書いていたのは次のことだった。
まず、著者とご両親との関係について補足する。
詳しくはこの本には書かれていないが、すこし普通と違っているようだというのは伝わってきていた。
それはこの部分を読んでもわかる。
もしいまも両親が生きていたとしたら、私はどうするだろう。会いに行く? いや、それはちょっと厳しいかもしれない。会って話をしても、分かり合えないかもしれないし、苛立ってしまうかもしれない。それだったら会わないほうがいい。
本文より
会いに行くのが厳しいと感じる関係、分かり合うのが難しい関係のようだ。
そのうえで著者は感謝をどう伝えるか、こう書いている。
たぶん私だったら電話をする。煩わしいと思われても、月に1回ぐらいは電話をして、さらりと要件を伝え、元気かどうか尋ねると思う。そして、あっさりと電話を切って、いつもの生活に戻るだろう。ときどき、食べ物を送るかもしれない。年に1回は顔を見せるかもしれない。面倒だな、嫌だなと思いながらも、きっとそうするだろう。そして、次の1年を過ごすだろう。そんなことができる人たちがうらやましい。
本文より
これを読んで、両親との関係は人それぞれで、それぞれなりの伝え方で伝えればいいのだと安心した。
最後の一文「そんなことが……」に心打たれた。
著者の、会いに行くのが難しいと思う両親にそれでも感謝の言葉を伝えたかったと思う気持ちが胸に響いた。
私は両親との関係が悪いわけではない(と思っている)のだが、かといって「生んでくれてありがとう」的な言葉を面と向かって言えるとは思えない。
想像するだけでこっぱずかしい。
そんな人がほかにもいるとしたら、その中にはこの部分を読んで私のようになんだかほっと安心する人もいるのではないかと思う。
後悔しないように、今回読んだこの箇所を忘れずに生きていこうと思う。
まとめ
忙しい日々の、生活の工夫と、物や人間関係の考え方は参考になる。
なにより文章にユーモアがあって読んでいて楽しい本。
個人的には著者の両親への思いを感じる箇所に出会えてよかったと思った。
この本は、頑張りすぎて(または頑張らばければと思いこんで)疲れてしまっている、やる気がなくなっている、悲しくなってしまっている人におすすめだ。
最後までお読みいただきありがとうございました。