本の紹介
タイトル:『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しか出てこない』自分の言葉でつくるオタク文章術
著者:三宅香帆(みやけ かほ)
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
2023年6月発行
252ページ
この本を読んだきっかけ
タイトルに共感しました。
まさに、推しを見た後の感想が、やばいしか出てこないので。
最初、この本は著者が自分の推しについて語る本なのかと思いました。
そうではなく、副題にもある通り推しの素晴らしさを発信したい人向けの文章術の本です。
本の要約
文章術の本。
著者はプロの書評家です。
SNS発信のコツは自衛
自分が思う推しの素晴らしさを自分の言葉で語りたいのに、いつも同じ言葉をつい使いがちである。
著者は、よく見かけるそういう使い勝手の良い言葉を、安易に使うのは危険とくりかえし警告している。
理由は、他人の言葉に洗脳されてしまい、自分の気持ちがそれらの言葉に置き換わってしまうから。
そして、他人に届きやすい、より強い言葉が使われるようになっていってしまう。
その強い言葉を自分の言葉であるかのように使っていくのは危険だと言っています。
そうならないために自分の言葉を他者の言葉から守ることが大切。
自分の言葉と工夫があれば伝わる文章が書ける
著者は、自だけの感想を自分の言葉で紡ぐ具体的なやり方を丁寧に教えてくれます。
ポイントは細分化です。
この、細分化のやり方を詳しく伝授してくれます。
これはなかなか自分では思いつかないことで、試してみようと思いました。
それから、人に文章を読んでもらうためのテクニック的なこともいくつか書かれています。
これも、知っているとより読んでもらえる上手な文章を書くことができます。
文章を書く時だけでなく、スピーチをするときにも役立つコツは、読んでいる(聞いている)人がどうなってほしいのか、どこに連れていきたいのかを自分がわかっておく、ということです。
知りたい人はぜひ読んでみてください。
感想
勇気をもらった言葉
他人の感情なんて、基本的には「推し」と「自分」の間において、なんの関係もない
本文より引用
著者のこの言葉が私に勇気を与えてくれました。
うっかり他の人の書いた感想を見てしまうと、自分が思っていたことと同じことをこんなに上手に言語化してくれている、と思ったり、その感想がとても上手に書けているので自分の感想が場違いものに感じられたり、的外れに思えたり、あまりにも幼稚でこんなことを書いたら笑われそうだと思ったりします(実際にその通りなのかもしれませんが)。
そうではなく、推しへの自分の気持ちは自分だけが感じるもので、伝える価値があるものなのだ、だから他人の言葉に惑わされる必要はないと、著者は強く言ってくれます。
自分の言葉を守るために、やってはいけないこととは
著者は、自分の言葉を守ることの重要性を繰り返し訴えますが、そうならないための策として「自分の感想を書く前に他人が書いた感想を読まない」ことを挙げています。
このことは私がまさに実行していたことでした。
私も、他の人が書いたものを読んでしまうとその意見に染まってしまう自分を知っていました。著者が書いているように、他者の感想に共感するとその感想を自分の感想のように思ってしまうことがあってもおかしくないと実感しています。
誰もが使う言葉、ちまたやSNS上にあふれている言葉(やばい・泣ける・考えさせられるなど)を使うと、いかにもちゃんと感想文を書けているように感じがちです。
私も泣けたよ、私も考えさせられたよ、と気持ちを分かち合っている感覚が得られるからかもしれません。
一方で、自分の中にはきっともっといろいろな感動の気持ちがあるはずなのに、それらが画一的なイメージに染まってしまう気がします。
せっかく自分が感じたことを型にはめてしまうというか。
厳密にいえばニュアンスが少し違っていたりする自分だけの感想のはずなのに、似たような言葉に引きずり込まれてとりこまれてしまうかのようです。
ですので私は本の感想を書くときは書評や口コミを見ることができません。
どんなに自分の感想に自信がなくても、誰の書いたものも見ないで書くようにしています。
そうでないと書けなくなってしまいます。
著者は、自分の感想を書き終えてからなら、見てもいいと書いています。見ることによって新たな気づきを得ることもできるから、と。
しかし私は、書き終わったらいったん満足しもう面倒くさくなって、結局誰の文章も見ないで終わることが多いです。
これでは独りよがりになってしまいますね。この点は少し反省しました。
私が感じた、著者と違う部分
私は今までに誰かに何かを布教(その魅力について語り、ファンになってもらうこと)したいと思ったことがほとんどありませんが、そのわけがわかりました。
面倒くさいからです。
この本のやり方で自分の推しから受けた感動を相手に伝えるには、まず相手の情報量を把握し、それと自分が伝えたいこととの情報量の差を埋めなくてはなりません。
相手がこちらの推しをどれくらい知っているかで、伝え方も変わります。
そうして土台を作ってからでないと、興味を引けないし、本当に伝えたいことがちゃんと伝わりません。
そうしてからやっと、自分が伝えたいことを伝えることができます。
そんなことは、考えただけで大変です。
そんな私はそもそもこうしてブログを書くことが向いてないのかもしれません。
なんだか申し訳ありません。
著者について
三宅香帆(みやけ かほ)
1994年1月生まれ(29歳)
徳島県生まれ、高知育ち
京都大学文学部卒業
京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了
博士後期課程中途退学
書評家、作家、大学講師
この本が10冊目の著書です。
宝塚がお好きなようです。
この本をおすすめしたい人
- SNSやブログなどで日々推しの素晴らしさについて発信していて、もっと布教したい人。あるいは、ただ記録しておきたい人。
- なにかについて自分独自の表現方法で書きたい人。
まとめ
他人の言葉を安易に使わず自分の言葉を守ることが大切と繰り返し伝えてくれています。
自分の想いを文章にするやり方、伝わる文章の書き方の工夫を具体的に伝授してくれます。
SNSで発信するとき以外でも、文章を書く時に役に立つだろうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。