本の紹介
読書冒険マラソンの第3作目です。
1冊目(五十音順じゃない)、2冊目(五十音順最初の作家さん)ときて、3冊目はまた五十音順ではなかったです。
選んだのはこの本です。
書名:『最後のページをめくるまで』
著者:水生大海(みずき ひろみ)
出版社:双葉社
出版年月:2022年6月
帯には、「わかりません」と大きく書かれています。
表紙を見ると、「最後のページをめくるまでわかりません」というわけです。
注意書きとして、
*絶対にページを後ろからは読まないでください。
帯より引用
とあります。
わかりました。後ろからは読まないように頑張ります。
この本を選んだきっかけ
返却されてきたときに目に留まった本です。
目を引くタイトルと、5編の短編小説がおさまっているということで、読みやすそうだなと思い借りました。
比較的新しめの本(2022年6月)だし、この表紙が自信たっぷりな感じで期待が持てたので。
感想
5編の短編から成っています。
5編は全く別の話で、つながりはありません。
「わずかばかりの犠牲」
「使い勝手のいい女」
「骨になったら」
「監督不行き届き」
「復讐は神に任せよ」
この5編です。
特に好きな短編について書きます。
「監督不行き届き」については書きませんが、つまらなかったわけではありません。
「使い勝手のいい女」
勝手にすごくドキドキして読み進め、最後の種明かしで「あー!まんまと騙されたー!(嬉)」となってしまいました。
そして二度読み返すという。
楽しめました。
どんでん返しのあとに主人公に「残念だったね?」と言いたくなる皮肉な結末。
「わずかばかりの犠牲」
詐欺に加担した学生が、逆に騙される。
自分が切り捨ててきた人たちに自分が切り捨てられる話。
軽く考えていた他人のお金、命。そして甘え。
そのことの代償として自分もそのように扱われる。
自分がしたことの結果は世界が許さなかった。
「骨になったら」
用意周到に懸命に罪を隠そうとする男が、結局あっけなく破滅していく話。
思うようにいかず自分の手をすり抜けていく現実に復讐されるような…
とても滑稽な面白さでした。
「復讐は神に任せよ」
復讐もの。
読み手は心情的に主人公側にいる。
そのためほかの登場人物が見えていない。
ただ伏線の中にその人物は確かに存在していました(読み返した)。
本当に上手だなあ、と思いました。
ラストで突然それぞれの行動を俯瞰でとらえることができたのが面白かった。
映像で上からすべてを見せられたような感覚でした。
それは神の視点だとも言え、題名につながります。
水生大海さんはこんな人
私は名前を見ただけで勝手に男性だと思っていましたが、水生大海さんは女性です。
出身:三重県鈴鹿郡関町
愛知県在住
大学卒業後出版社に勤務された後、漫画家としての経歴もお持ちです。
2008年に第1回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞に応募。「罪人いずくにか」で優秀作を受賞。
その後改稿し「少女たちの羅針盤」として2009年に出版され、2011年には映画化されました(成海璃子ら出演)。
まとめ
全編、舞台を見ているような感じでした。
日常的なミステリーです。
滑らかに場面が進みます。
読者をミスリードするのがとてもうまいと思いました。
5編とも伏線が自然で全く気づきません。
といっても私は今までミステリーの伏線に気づいた経験はないのですが。
ブラックユーモアで、深刻にならずに楽しめる軽さがあり、良かったです。
そんなに時間をかけずに楽しめるブラックなミステリー。
軽く騙されて楽しみたい人におすすめです。
最後までお読みいただきありがとうございました。