辻堂ゆめ「サクラサク、サクラチル」を読んだ感想!|読書冒険マラソン記1

辻堂ゆめの「サクラサク、サクラチル」を読んだ感想
目次

本の紹介

読書冒険マラソンの第一作目です。

読書冒険マラソンとは…
れんげの働いている図書館にある日本の小説(913.6)を、著者一人につき一冊ずつ順番に読んでいき、全作家制覇を目指す企画です。
備忘録としてこのブログに感想を残していきます。
基本、書架に並んでいる順(五十音順)に進め、すでに読んだ著者も今一度読みます。
作家それぞれの世界を冒険しに行ってきます!

五十音順に始めるつもりでしたが、この企画を始める前に予約をしていたものがちょうど届いたため、順番待ちを無駄にしないために先に読むことにしました。

題名:「サクラサク、サクラチル」

著者:辻堂ゆめ(つじどう ゆめ)

出版社:双葉社

出版年月:2023年7月

349ページ

”絶対に東大合格しなさい”

ーそれは愛、だったのだろうか。

帯より引用

進学校に通う高校3年生の男女二人が主人公。

染野隆志は両親から東大に合格することを強いられ、日々勉強させられています。

両親は隆志を完全に支配下に置いていて、隆志の生活は異常です。

ある日クラスメイトの星愛璃嘉に、それが虐待だと見抜かれます。実は星さんも、親から虐待されています。

最初は自分の境遇を虐待だと認めなかった二人ですが徐々に認識し、反抗心が芽生えた二人は親への復讐を計画し始めます。

後半、ある一つの謎と、二人の復讐の全貌が明らかになります。

この本を選んだきっかけ

新刊本チェックのときに表紙の絵と題名を見て、受験生の話だと思い、主人公がうちの子と年が近いので気になりました。

帯を読むと、主人公たちは自分たちを追い詰めた親に復讐を計画しているとのこと。

子供から親への復讐とはいったいどんなものなのかと興味がわき、予約しました。

心に残った一節

「私たちは、親を憎んでるんじゃなくて、”愛してる”。そして愛されようとするのを止められないんだ。だって、生きるためには親に好かれないといけなかったから。母乳を飲んで、ご飯を食べさせてもらわなきゃいけなかったから。その本能は、いつまで経っても消えない。成長して親の助けが要らなくなっても、この人に愛されるなんて絶望的だと頭の片隅では分かっていても」

本文より引用

主人公たちが、自分たちが虐待されていると気づくまでにも時間と葛藤が必要だったのですが、そのこと気づいてからもこの本能のせいで葛藤は続くのだとしたら、つらいですね。

虐待されたわけではなくても、たとえば自分よりも兄弟姉妹のほうが親に愛されていると思い葛藤を感じることもありますよね。

私たちは皆多かれ少なかれ、その本能の影響を受けているのかもしれないと思いました。

ーなんで今まで分からなかったんだろう。私たちがこの世界に生まれてきたのは、頑張るためでもなく、我慢するためでもなく、苦しむためでもなかったんだって。別にそんな思いをしなくても、人生は成り立つんだって。

本文より引用

自分が虐待されているとわかった主人公たちが、今までの苦しかった生活から自由になっていいのだと気づき、人生は楽しむためにあるのだと実感しているのが感じられる言葉です。

それまでの彼らの人生は、本当の意味で彼らの人生ではなかった。

自分の人生を考え始めることが出来た、目の前がぱあっと明るくなるような、生きる喜びが感じられ、嬉しくなります。

若い人には青春を謳歌してほしいものです。

感想~スマートな復讐

隆志の家は裕福ですが、隆志には自由に使えるお金も時間も与えられておらず、スマホも連絡時のみの使用に制限されているし、星さんは親に寄生されているので時間もお金も乏しい。

学校の先生も頼りになりません。

そんな状況で”復讐”と聞けば”目には目を”的な、暴力的なものを想像するのではないでしょうか?

一体どんな凄惨な場面が繰り広げられるのだろうと思って読み始めましたが、しかし全部読み終わった後、私はそんな想像しかできなかった自分を恥じました。

この「復讐」が、この物語の最大の魅力だと思います。

いったいどんな復讐なのでしょうか?

ぜひ読んでみてください。

主人公たちは進学校に在籍しているだけあって頭がいいです。

とてもスマートな復讐でした。

そしてそれは、復讐と同時に、二人の未来を切り開くことでもありました。

主人公たちが、恵まれない、あるいは困難な状況の中でもよく考え、できることを頑張り、希望をもって生きていこうとする姿は健気でまぶしく、さわやかな読後感でした。

陰湿な復讐劇ではなく、でも「やったー!ざまあみろ」というハレバレとした気持を味わわせてくれます。

二人の両親も視点を変えればかわいそうな人たちなのですが、そのあたりにはあまり言及せず、見えるまま、単に悪者として描いていたのもよかったと思いました。

どんな事情があっても虐待は許されないことで、虐待される側が情状酌量する必要はないのです。

辻堂ゆめさんはこんな人

この本を読んだ後で知ったのですが、辻堂ゆめさんは東大卒です。

生年月日:1992年12月(30歳)

出身地:神奈川県藤沢市辻堂元町

出身高校:神奈川県立湘南高等学校

中一から高1までアメリカで暮らす

辻堂という名前は、出身地からとったのですね。

帰国後辻堂ゆめさんが編入された神奈川県立湘南高等学校は歴史のある名門校です。

そこから東大へ進み、法学部在学中に「いなくなった私へ」で第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し、ミステリー作家としてデビューされました。

受験勉強の様子など、ご自身の体験をもとに語られているのでしょうか。

まとめ

こんなさわやかな復讐はなかなかないですよ。

辻堂ゆめ「サクラサク、サクラチル」  双葉社 

2023年7月出版

晴れ晴れとした気持になりたい人におすすめです!

ぜひ読んでみてください。

辻堂ゆめの「サクラサク、サクラチル」を読んだ感想

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