愛川晶「うまや怪談」を読んでみた|読書冒険マラソン記2

愛川晶「うまや怪談」の紹介
目次

本の紹介

読書冒険マラソンの第2作目です。

読書冒険マラソンとは…
れんげの働いている図書館にある日本の小説(913.6)を、著者一人につき一冊ずつ順番に読んでいき、全作家制覇を目指す企画です。
備忘録としてこのブログに感想を残していきます。
基本、書架に並んでいる順(五十音順)に進め、それまでに読んだことのある著者も今一度読みます。
作家それぞれの世界を冒険しに行ってきます!

一作目が五十音順ではありませんでしたので、この2作目が五十音順最初の作家さんになります。

れんげの働いている図書館では913.6の最初の作家さんは愛川晶(あいかわ あきら)さんです。

選んだのはこの本です。

題名:「神田紅梅亭寄席物帳 うまや怪談」(かんだこうばいていよせものちょう うまやかいだん)

著者:愛川晶(あいかわ あきら)

出版社:原書房

出版年月:2009年10月

336ページ

帯にはこうあります。

高座で罠を打ち返し、

怪談噺で謎を解き、

ついには「あの人」を引っ張り出して……

「ものぁついでだ。

”そっち”の謎も解いてやるぜ!」

帯より引用

落語をしながら謎を解くスタイルのようです。

この本を選んだきっかけ

本格落語シリーズ第3弾ということです。

落語シリーズ以外の本もありましたが、少しだけ落語に興味があったのでこのシリーズから選びました。

シリーズの最初から読みたかったのですが最初の巻がれんげの図書館には置いてなかったので、何冊かあるシリーズの中から選びました。

感想

一冊の中に3つの話がありました。

主人公は噺家の寿笑亭福の助とその妻亮子。

この亮子が語り手です。

ねずみととらとねこ

悪役とのバトルです。

福の助の兄弟子が、福の助の高座の妨害を企てますが、師匠の推理のおかげで危機を回避します。

私は落語をちゃんと聞いたことがないのですが、この本では本当の落語の話も紹介されています。その本当の話と、福の助が創作した部分の違いが興味深かったです。

落ちの部分が違うのですが、その落ちの部分もめったやたらと落ちを付けたのではなく、他の噺の落ちをアレンジしているようで、センスがあると感じさせます。

落語をよく知っていないと書けないと思いました。

落語は奥が深そうです。ハマればとても面白そう。

うまや怪談

「厩火事」「包丁」「猫怪談」の噺を関連付けて、謎を解く話です。

亮子の勤めている高校での謎、噺の中の登場人物に関するちょっとした謎、そして、亮子の兄の縁談が決裂しそうだという状況(しかもそれが自分の噺にかかっている)を、福の助が落語で一気に解決します。

落語には怪談噺というジャンルがあり、効果音などを使った演出があるそうです。面白そうですね。夏に聞いてみたいなと思いました。

今回福の助が、噺の中の登場人物の職業について悩むのですが、同じ噺でも演じる人によって登場人物の人物像が違うということにまず新鮮に驚きました。

誰がやっても同じではないのですね。決まっていないことは演者が自由に設定していいようです。

そこに個性も出て、演者それぞれの味というものも現れてきます。

福の助は、そんな細かいことに悩む生真面目な性格ですが、一つの高座ですべて納得させるという、ぶっつけ本番で大胆なこともできる魅力的な人物だと思います。

あとがきを読んでわかったのですが、この作中落語の「うまや怪談」は、作者の愛川晶さんが創作した噺だそうです。

すごいですね。

宮戸川四丁目

福の助の師匠である馬春師匠がからんだ話。

馬治師匠はどうやら、いつも名推理をする人のようです。福の助も亮子も競うように推理をするのが好きらしいのですが、この師匠は別格らしく、最初の章「ねずみととらとねこ」でも話を聞いただけで謎を解きます。

今回は、福の助と亮子に、師匠が秘密を見破られてしまいました。

とくに最後に福の助が高座で演じる噺が、とても面白かったです。

馬春師匠が一度だけ演じた印象的なオチはいったいどんなものだったのかが、皆の興味を引くのですが、それを謎解きの終わりに福の助が演じます。でもそのオチには実はとんでもない秘密が隠れていて、最後の最後にその秘密も露見します。

噺のマクラ(噺の導入部)が伏線になっていて、サゲ(落ち)のときに思わず膝を打ちたくなるほど見事に生きてきます。

愛川晶さんはこんな人

愛川晶(あいかわ あきら)

出身地:福島県福島市

生年月日:1957年5月30日(66歳)

出身校:筑波大学第二学群比較文化学類卒業

推理作家。

高校の社会科教員をしながら1994年(37歳)のとき「化身」で第5回鮎川哲也賞受賞

数多くの本格ミステリーを執筆している。

谷原 秋桜子(たにはら しょうこ)という別の名義でも小説を発表しています。

解説を読むと、愛川晶さんは学生時代、落語研究会に所属していたと書かれていました。ただ好きなばかりでなく、ご自分でも落語をされていたのですね。だからこそ、ここまで本格的に書けるのだと合点がいきました。

まとめ

落語について知らなかったことが少しわかって、興味深かったです。

まくら、さげなどの用語や、しきたりなど。

落語は自分で作ってもよい、とか。まるっきり新しいものを作ったり、落ちの部分を変えたりしてもいいらしいです。

それから、演目はその日その時で決めてもよい、とか。お客の顔ぶれや雰囲気をみたり、前の人の噺を聞いてからふさわしいものに変えたりしてもいいらしいです。

これらのことは基本的なことかもしれませんが、私は知りませんでした。

落語はとても自由度が高いのだと感心しました。

一度はこの目で見に行きたいと思いました。

正直、ミステリーの要素より、落語の要素が面白かった本でした。

愛川晶「うまや怪談」の紹介

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